エルサレム賞受賞騒動を聞いて

表題のエルサレム賞受賞のおかげで、ネット上でいくつか論争が巻き起こっているらしい。
もちろん、「あの」イスラエルの「あの」エルサレムでは、
政治的プロパガンダの一環として開催される授賞式では、
それなりに政治的な立ち振る舞いが要求される。
と言ってそんなこと自体、一作家の知ったことではない話であろう、という気もする。
自分から賞をくれ、ってネダったわけではなく、巻き込まれただけの話だろうから。


だけどこんな論争が巻き起こるのも、それが村上春樹だからなのだろう。


個人的には自分がハルキストだとは思わないが、村上春樹の小説は大半を読んだ。
きっかけはごく単純だ。
大学生のころ、司馬遼は昔からよく読んでいる、という話をある人にしたら、
「じゃあ村上春樹は読まないでしょ?
 司馬遼と村上春樹を、両方読む人はまずいないから。」
と指摘されたことだ。


確かにそれまで読んだことがなかったので、初めて読んでみた。
とりあえず初期の頃のものを、と考えて、「風の歌を聴け」「ノルウェイの森」と。
司馬遼と比較するのは無茶な話だが、両方とも読む人はまずいないだろうと思う。
それは年代的なものもあれば、性格的なものあるだろう。
あまりにもかけ離れた世界だから。


村上春樹の世界観自体は嫌いではない。
彼の時代背景や思想背景やテーマには、正直なところあまり興味は無い。
根拠は無いけれど、彼自身もそんなに主張があるわけではないんじゃないかと思う。
「あちら側」と「こちら側」が交錯する瞬間、
全く違う次元でありながら、それでいて実は、その二つにはほんの薄皮一枚ほどの隔たりも無い。
日常に潜む非日常。
時代背景が何であろうと、それこそが彼の描こうとする主題のひとつではないかと僕は認識している。


多少の違和感はあるけれど、現代日本の作家として、
彼ほどの世界的な実績を上げ、影響力を持ちえた作家はいないわけだから、
やはり一人の日本人として読んでおくべき作家の一人じゃないだろうか。


別に文学論をしたいわけではないので、(そんな能力もヒマも無い)
一読者の感想程度に聞き流してもらえればOK。


ちなみに今から読み始める人へのお勧めは、
ノルウェイの森」「スプートニクの恋人」あたりだろうか。
読みやすい、という意味で。